[PR] 看護師 転職 院長の独り言 2019年08月01日
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湘南で開業している歯科クリニック院長の日々雑感です。

HIV

2019 - 08/01 [Thu] - 13:38

「HIV内定取消事件」で医療者の取るべき行動とは?

ジャッジ

 「同業のものに対しては常に誉めるべきであり、たとえ、それができないようなときでも、外交辞令に努めるべきである。決して他の医師を批判してはならない」――。

 フーフェランドが著し、緒方洪庵が訳したとされる『扶氏医戒之略』に登場するこの言葉(現代語訳は馬場茂明著『聴診器』より)は前医の診療を評価すべきという意味だが、狭義の診療だけでなく医師が医師として判断する全てにおいて「他の医師を批判してはならない」と僕は考えている。

 だが、「札幌HIV陽性ソーシャルワーカー内定取り消し事件」に関しては、その病院の医師の対応に首をかしげざるを得ない。この事件が最初に報道された2018年7月、まさか本当に裁判になるとは微塵も思っていなかった。まずは事件の経過を報道から振り返っていこう。

 2017年12月、北海道在住の30歳代男性(Aさん)は北海道社会事業協会の運営する病院に応募し、ソーシャルワーカーとして採用が内定。Aさんは応募する前にその病院に患者として受診したことがあり、HIV陽性であることがカルテに書かれていた。2018年1月、病院はそのカルテからAさんの感染を知り「HIV陽性を告げなかったこと」を理由に内定取り消しを告げた。Aさんは「就労に問題はなく、業務で他者を感染させる心配はない」とする主治医の診断書を病院側に送ったが覆らず。2018年7月、Aさんは病院に慰謝料の支払いなどを求めて札幌地裁に提訴した。2019年6月11日、Aさんに対する本人尋問が札幌地裁で開かれた。

 こんな裁判が本当に行われれば、この病院は世間に恥をさらすだけでなく全国(あるいは全世界)から糾弾されるだろうから、さっさと内定取り消しを撤回してAさんに謝罪して慰謝料を払う以外の選択肢はないはずだ、と僕は考えていた。HIV感染を理由に解雇することは厚生労働省による「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」で禁じられているし、過去に行われた同じような裁判では雇用側が敗訴(注)しているのだから。

 それにHIV陽性の看護師が感染を理由に病院を解雇された「福岡HIV陽性看護師解雇事件」はすでに決着がついている。少し長くなるが重要な事件なので、ここで振り返っておこう。


 2011年8月、福岡県のB病院に勤務していた看護師が患者として同院を受診。B病院では診断がつかず、C病院を受診したところHIV感染が判明。C病院の担当医は「患者への感染リスクは小さく、上司に報告する必要はない」と伝えた。ところが、C病院の別の医師がその看護師の許可を得ずにB病院の医師にHIV感染をメールで通知。看護師はB病院の上司から「患者に感染させるリスクがあるので休んでほしい。90日以上休職すると退職扱いになるがやむを得ない」と告げられ、休職後の2011年11月末に退職させられた。

 2012年1月11日、看護師は「診療情報が患者の同意なく伝えられたのは医師の守秘義務に違反する。休職の強要も働く権利を侵害するものだ」という理由で、B病院、C病院の双方を提訴。2013年4月、福岡県地裁支部にて原告(看護師)とC病院の間で和解が成立。守秘義務違反で提訴していた原告の主張をC病院が認めた。一方、看護師が勤務していたB病院は、「わずかでも患者にHIV感染の危険がある以上、看護業務から離れてもらうのは医療機関として当然だ」などとして看護師と争った。2014年8月8日、福岡県の地裁支部はA病院による看護師のプライバシー侵害と就労制限の不当性を認定した。

 この事件が起こる以前の2010年には、愛知県の看護師がHIV感染を理由に退職勧奨をされるという事件があったが看護師は提訴しなかった。だが、この事件がきっかけとなり、日本看護協会は ウェブサイトに「HIVに感染した看護職の人権を守りましょう」というタイトルで「感染者の就業制限はありません。引き続き看護職としての就業が可能です」「感染を理由とする解雇・退職勧奨は違法行為です」と明記している。

 つまり、日本看護協会の声明と福岡HIV陽性看護師解雇事件のことを鑑みれば、札幌の病院は直ちに和解に応じる以外の選択肢はないのだ。病院側はHIV陽性であることではなく、感染している事実を告げなかったことが理由だと主張しているようだが、これも詭弁に過ぎない。「HIV陽性であることは応募時に申告しなくてよい」と法的に記されたものは(僕の知る限り)ないが、この点について、僕は過去に複数人の弁護士に尋ねたことがある。どの弁護士も、「HIV感染は社会通念上、告知自体が不利益になる可能性が高く、業務を介して他人に感染させる可能性がないため告知する必要はない」と回答した。

 一部の報道によると、本人尋問で病院側の弁護士がかなり差別的な発言をしたようだが、弁護士にこのようなことをさせている病院は恥ずかしくないのだろうか。内定を取り消し、男性からの提訴に応じたのは医療者でなく病院の事務方の者だとは思うが、だとしても、実際に裁判が開始されるまでに医師に全く報告されていなかったということはないだろう。よしんば知らされていなかったとしても、このようなばかげた裁判が開始されたことが各メディアに報じられているのである。今からでも非を認めて直ちに和解に応じるように病院を説得するのが医師の役割ではないだろうか。

 ところで、太融寺町谷口医院ではHIV陽性者を診察しない日はほとんどない。それらの患者は抗HIV薬はエイズ拠点病院に処方してもらい、日ごろのプライマリ・ケアでは谷口医院を受診している。最近はHIV陽性者の高齢化も進んでいるが、それでも大半は働く若い世代であり仕事を持っている人が圧倒的に多い。社会的地位の高い人も少なくなく、教師や公務員、大企業の管理職なども珍しくない。業種別でみると実は「医療職」もかなり多く、医師や看護師、介護士、臨床検査技師などに加え、ソーシャルワーカーの患者もいる。そして、医療職である全員が「HIV陽性であることを職場に伝えていない」のだ。

 残念ながらHIVに対する正確な知識は世間には伝わっていない。今回の札幌の事件を受けてのウェブの書き込みをみるとAさんを非難するコメントが多く、驚かされた。こういった誤解や偏見をなくしていくのも我々医療者の役割だと思う。例えば、我々がメディアを通じて正しい知識を啓発するのも1つの方法だろう。また、僕は医療者でない友人や知人には次のような話をしている。

 大きな病院なら職員の何人かがHIV陽性であってもおかしくない。彼(女)らはきちんと治療を受けていて血中ウイルス量はほぼゼロだから他人に感染させる可能性はない。残念ながら世間には偏見があるから堂々とカミングアウトしている者はほとんどいないけれど、我々は同僚からHIV陽性であることを告げられても特に驚かない。もちろん病院だけじゃない。一般企業や公務員でもHIV陽性者は珍しくない。ところであなたは感染してないって言い切れる? 最後に検査をしたのはいつ?

 一般社会への正確な知識の啓発よりもずっと重要なのは「医療者が正確な知識を持ち、医療機関内での差別をなくすこと」だ。そして、医療機関での差別がなくなるまではHIV陽性の医療者は感染を職場に報告すべきでない、と僕は考えている。これを読まれている医療者のあなたには次のことを尋ねてみたい。

 HIVの検査、最後にしたのはいつですか? もしもHIVに感染していたとすれば職場に報告しますか? 転職するときは面接時に告げるのですか?

************
(注):下記の裁判が有名です。

●千葉HIV陽性者解雇事件:千葉県の企業が定期健康診断で社員のHIV検査を無断で実施。1人の従業員の陽性が判明し、検査を請け負った病院は従業員の許可を得ず会社に通知した。会社はHIV感染を理由に解雇。千葉地裁は「解雇は不当」とし、会社と病院長に慰謝料の支払いを命じた。さらに、不当な解雇によって就労できなかった期間の賃金請求権を認めた(千葉地判平12.6.12労判785-10)。

●派遣HIV陽性者解雇事件:派遣先企業で労働者のHIV感染が発覚し、派遣先企業が派遣元企業へ労働者の感染事実を連絡し労働者が解雇された。東京地裁の判決は「HIV感染を理由とした解雇は許されず、派遣先企業が感染を派遣元企業に報告したことはプライバシーの権利を侵害している」として不法行為を認めた(東京地判平7.3.30労判667-14)。

●警視庁HIV陽性者退職勧奨事件:警視庁警察官採用試験に合格し、警視庁警察官に任用された男性が、採用後に同意なくHIV検査が実施され陽性であることが判明し、これを理由に退職勧奨された。東京地裁は「本人の意思に反してHIVに感染しているという情報を取得することはプライバシーを侵害する違法な行為である上、HIV感染の事実から警察官の職務に適さないとはいえない」として、警視庁警察学校と東京警察病院に対して440万円を支払うよう言い渡した(東京地判平15.5.28労判852-11)。

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2019 - 08/01 [Thu] - 06:18

今日から8月ですね
昨日は夕方から県歯科医師会館へ・・・

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三連続出勤の幕開けです
昨日は神奈川県HIV歯科診療体制運営検討委員会



今日は理事会で、明日は学術大会、地域歯科医療研修会打ち合わせです

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Author:zahnarzt
zahnarztとは、ドイツ語で歯科医師の事です。
昭和と平成をそれぞれ31年ずつ生きてきて・・・令和を粛々と過ごしています。
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愛犬のレオは、2006年9月12日に天国に旅立ってしまいました。
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