Dementia Risk in People With Type 2 Diabetes
HbA1c値が9%以上の期間が長いと認知症発症リスクが高くなる可能性
National Center for Healthy Aging
・これまで、認知症のリスクがもっとも低くなるHbA1c値の水準については不明であった。
・今回の研究では、50歳以上の2型糖尿病患者253,211人のデータをもとに、HbA1c値と認知症、経時的に変化する血糖への累積曝露との関連について調査された。
・研究結果によると、HbA1c値が9%以上の期間が長い患者において、認知症リスクが最大となることが明らかになった。
オーストラリア・メルボルンにあるNational Center for Healthy Aging (NCHA)は4月17日、HbA1c値が9%以上の患者は認知症リスクが高くなる可能性について発表した。
この研究は、NCHAおよびモナッシュ大学に所属するChris Moran博士と、ケンタッキー大学、カリフォルニア大学、スタンフォード大学の共同研究によるもの。研究成果は、JAMA Neurology(IF:29.907)に掲載された。
認知症のリスクが最大になるHbA1c値はどれくらい?
糖尿病と認知症の関連については、これまでのさまざまな研究で報告されているが、認知症のリスクがもっとも低くなるHbA1c値の基準については不明であった。そのため、この研究は、さまざまな範囲のHbA1c濃度への累積曝露と認知症リスクとの関連性について、性別や人種、民族を超えて検討することを目的に行われた。
被験者は、1996年1月1日〜2015年9月30日までの期間に、50歳以上であった2型糖尿病患者253,211人。Kaiser Permanente Northern California(KPNC)統合医療システムに登録されている、2020年2月〜2023年1月までのデータをもとに分析が行われた。
なお、研究期間中のHbA1c測定が2回未満である者や、ベースライン時に認知症に罹患している者、追跡期間が3年未満の者は除外された。
被験者はHbA1c測定時の値によって、以下のように分類された。
・6%未満
・6~7%未満
・7~8%未満
・8~9%未満
・9~10%未満
・10%以上
認知症の診断には、国際疾病分類第9改訂版をもとに特定され、Cox比例ハザード回帰モデルは、年齢、人種、民族、ベースラインの健康状態、およびHbA1c測定値を調整し、認知症と経時的に変化する血糖への累積曝露との関連を推定した。
HbA1c値が9%以上の期間が長いと、認知症リスクは最大になる
参加者の平均年齢は61.5歳(SD:9.4歳)で、全体の53.1%が男性であった。また、追跡調査の平均期間は5.9年(SD:4.5年)であったとのこと。
すべてのHbA1c測定時において、50%以上の割合でHbA1c値が9〜10%未満、または10%以上であった被験者は、50%以下の被験者と比較して認知症のリスクが高かった。一方、測定時にHbA1c値が6%未満、6~7%未満、7~8%未満であった割合が50%以上であった被験者は、認知症のリスクが低いという結果がでた。
以上のことから、HbA1c値が9%以上の期間が長い患者において、認知症リスクが最大となることが明らかになった。
HbA1c値が9%以上の期間が長いと、認知症リスクは最大になる
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一般社団法人日本糖尿病学会によると、高齢者の血糖コントロール目標であるHbA1c値は、以下の通りである。
高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)(画像は日本糖尿病学会HPより引用)
今回の研究結果によって、認知症リスクが高くなる可能性が示唆された「HbA1c値9%以上」という数値は、日本の基準と比較すると高めの数値であるものの、大きくかけ離れたものではないことが伺える。
糖尿病と認知症は歯科にも大きく関わる全身疾患であることから、今後新たに出版されるガイドラインで明示される基準値については、かならず確認しておきたい。
Glycemic Control Over Multiple Decades and Dementia Risk in People With Type 2 Diabetes
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periodontal disease
歯と口の健康が全身の病気リスクに影響することを踏まえ、厚生労働省が、歯周病などの進行状態を簡易に調べられる検査キットや診断アプリの開発支援を始めることが30日、同省への取材で分かった。簡易検査の普及で自治体や職場の歯科検診の機会が増えれば患者に早期受診、治療を促すことが可能になり、健康寿命の延伸につながる。
口内の健康に大きく関係するのが歯周病。細菌を含んだ歯垢が原因で歯茎が炎症を起こし、悪化すると歯を支える歯槽骨が溶けることもある。細菌などが体内に入り糖尿病や動脈硬化、誤嚥性肺炎といったリスクを高めるほか、認知症にも影響があるとされる。
厚労省は新事業で、簡易検査キットのほか、スマートフォンで撮影した歯茎の画像を診断するアプリなどの開発に取り組む企業や大学を、近く5団体ほど選定。必要な費用を補助し実用化を支援する。
現在、簡易キットによる検査は、口の中を拭った綿棒を郵送で診断するなどの方法を一部企業が実施している。 ポチっと応援よろしくお願いいたします。
Periodontal disease
35歳以上の日本人が8割も感染しているといわれている感染症をご存じですか?
意外に感じるかもしれませんがそれは・・・歯周病です。
歯周病とは歯の周囲に歯周病菌と呼ばれる細菌が繁殖し、 歯肉を炎症させて、最終的には歯自体が崩れ落ちる病気で、 歯周病は細菌感染症なのです。
そして、歯周病が厄介なのは毒性物質が歯肉の血管から全身に流れて さまざまな病気を誘発することです。
明らかになった糖尿病と歯周病の関係
・HbA1cが9%以上の人は健康な人よりも歯周病の割合が2.9倍も高い
・BMIが27以上の人は歯周囲炎の割合が1.35倍高い
・空腹時血糖値が125mg/dl以上の人は歯周ポケットが3.5mmになると糖尿病が明らかに増える
歯周病と糖尿病の負のスパイラル
糖尿病から歯周病になることもあれば、歯周病が原因で糖尿病になることもあります。
そして、最も怖いのはお互いが影響し合い、糖尿病と歯周病が悪化する負のスパイラルです。
糖尿病 高血糖が続く
→ 歯肉の毛細血管が弱くなる
→ 歯肉の炎症が悪化
→ 免疫力の低下
→ 歯周病菌が増殖
歯周病 炎症促進物質が発生
→ 炎症促進物質が毛細血管から全身に
→ インスリンの働きを阻害
→ すい臓が疲弊する
→ 糖尿病が悪化する
負のスパイラルを起こさない対策
糖尿病対策
1.今の血糖値を知ること
2.血糖値上昇をなめらかにする
3.ヘモグロビンA1cを正常値に保つ
歯周病対策
1.就寝前の歯磨きで細菌除去
2.起床直後の歯磨きで細菌除去
3.歯間清掃具でプラークの除去
歯科医院での定期的なメインテナンスも重要です ポチっと応援よろしくお願いいたします。
SDS
歯磨剤の新型コロナウイルスに対する不活化効果
洗浄剤に含まれるラウリル硫酸ナトリウム(SDS)など、界面活性剤がウイルス表面の脂質2重膜構造を破壊することにより不活化されることが知られています。同様に、発泡剤として歯磨剤にも、SDSが含まれています。その結果、他者への感染リスクが低減できるのではないかと考え以下の実験が行われました。
歯磨剤と新型ウイルス液と混合し、一定時間反応させた後ウイルスの感染価にどの程度影響あるか調べた結果、99.9%以上の不活化が認められました。また興味深いことに、SDS含有モデル歯磨剤は、同濃度のSDS単独の水溶液よりもウイルスの不活化効果が高いことが分かりました。
この理由については引き続きの検証が必要ですが、歯磨剤に配合されているソルビトールやプロピなどのレングリコールなどの多価アルコールにより、SDSによる不活化効果が増強される可能性が示唆されています。
また今回の結果は試験管内の実験によるものであり、実際の口の中でのウイルス不活化効果を保証するものではありませんが、ウイルス感染対策としての口腔ケアの有効性を示すものと考えています。(参考文献:岡山理科大学 森川茂、日本歯科医師会HP) ポチっと応援よろしくお願いいたします。